営業の効率化や見える化を目的としてSFAツールやMAツールなどのツールを導入している企業が増えてきていることからも分かるように、近年ではさらに「Sales Tech」と呼ばれるサービスへの注目が高まっています。
Sales Techに分類されるサービスは、「セールスイネーブルメント」という営業組織の在り方を構築して実行へ移す際に必要性が高まるツールです。
そこで今回は、営業組織をより良い方向へ導くための考え方であるセールスイネーブルメントについてご紹介いたします。
目次
セールスイネーブルメントとは
「セールスイネーブルメント(Sales Enablement)」とは営業組織の強化や改善をするための取り組み全体を指します。
営業を考えると商談のためのアポイント獲得活動や商談などの活動に焦点があたりがちですが、セールスイネーブルメントでは、見込み顧客獲得のためのマーケティング活動やクロージング活動、人材教育など営業に関わる全ての活動を含みます。
例えば、営業担当者の研修や営業プロセスの作成、営業ツールの導入といった営業に関する施策設計・分析を行い、目標の達成状況や各施策の貢献度などのKPIを設定して実績を見える化していく動きを指します。
そうすることで、個人、チームの営業成績の達成度合いはもちろん、営業研修がどれだけ成果に繋がっているのか、トップセールスがどのような営業活動を行っているのかを明確にして社内で共有することができます。
特に中小企業では、営業が属人的で個人個人のスタイルに任せられている場合も少なくありませんが、セールスイネーブルメントの取り組みを行なっていくことで組織的に営業チーム力を高めていくことが期待されます。
セールスイネーブルメントが注目されている理由とは
では、なぜセールスイネーブルメントが注目されているのか理由を見ていきましょう。
営業活動が属人化している
セールスイネーブルメントが注目されている1つ目の理由は、営業活動が属人化しており個人ごとでパフォーマンスのばらつきが大きい傾向にある点です。
業界にもよりますが、元々営業は自分の成果を上げている手法を他の人に教えるのに積極的では無い場合も多く見受けられます。
理由としては、自分のノウハウを教えることでライバルが登場してしまい、自分の優位性が無くなってしまう可能性があるからです。
しかし、近年は個人の成績ももちろん重要ですが、チームや組織として売上の最大化を図ることをミッションとしている会社も増えてきているため、営業担当者が個人成績の向上にのみ執着する傾向は薄れてはきている企業も増えているのではないでしょうか。
さらに、新型コロナウイルスの影響もあり、会社全体としての売上アップが死活問題になっている企業も多いため、評価制度の見直しも含めて全体的な最適化を図るためにもセールスイネーブルメントを取り入れる企業も見受けられます。
分業体制になってきている
今までは新規顧客のアプローチからクロージングまでを一人の営業担当者が行うことが珍しくありませんでしたが、 分業体制になったことで新規顧客のアプローチ担当とクロージング担当が明確に分かれている企業もあります。
分野によって担当者を細かく分けて各部門を最適化していくことで、組織としての営業力を強化しようという企業の動きです。
しかし、マーケティングとセールスの連携が悪く個別最適に偏るとMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用して良質なリードを多く集めても、 売上に繋げることができない状況が発生してしまう為、全体最適化の取り組みの重要性が増してきたのです。
各種ツールにより数値化しやすくなった
SFAツールをはじめとする幅広いマーケティングツールが登場したことにより、売上金額以外の様々な指標を数値化しやすくなったことも理由として挙げられます。
「受注率」や「1件あたりの売上単価」、「成約までにかかる商談回数、期間」などをツールで管理することでどこが良くてどこが悪いのかを見える化し、改善していくことができます。
セールスイネーブルメントは売上への道筋やハイパフォーマーのコンピテンシー(行動特性)を論理的に分析して他にも広げていくことで成果に繋げていくことが期待されています。
セールスイネーブルメントの取り組み方について
では実際に、セールスイネーブルメントをどのように取り組んでいけば良いのか見ていきましょう。
組織体制と制度設計の見直し
上述のように営業担当は属人化しやすい傾向があり、個人成績に応じてインセンティブが付与される企業も多いため、経営陣をはじめ「組織体制」と「制度設計」の見直しを行う必要があります。
個人成績を重要視した体制、制度のままだと個人プレーの意識が残ってしまい、セールスイネーブルメントがうまく定着しない可能性もありますので、まずは組織全体としてセールスイネーブルメントを取り込めるような体制を作り上げていくことが最も重要と言えるでしょう。
Sales Techツールの導入、見直し
セールスイネーブルメントでは売上や顧客単価、受注率の他にも顧客情報やコンタクト履歴、教育履歴といったデータ蓄積と分析を継続的に行なって、営業活動を改善していく必要性があります。
そのためにはSFAツールやMAツール、eラーニングシステムなどを上手く活用していくことで、リモートワークの環境下でも各営業担当の動きを見える化できるように効率的にデータを管理していきましょう。
実際に、このようなSFAツールやMAツールなどのSales Techは、各企業で導入が進みつつあります。
ITR社によるとセールスイネーブルメントのツール市場は2017年度売上が14億円、前年度比6.1%増という結果も出ており、市場のCAGR(2017~2022年度)は17.2%と今後も高い伸びが予測されています。
数あるサービスの中から自社に必要な機能を備えたツールを選別し、導入を検討してみましょう。
営業成果に対する貢献度の把握
各営業活動のなかで収集したデータから営業成果に「誰が」「何に」「どれだけ」貢献できているのかを分析します。
営業成果の分析は、事前に設定したKPIを用いて進捗状況の管理や達成度合いを常時確認し、定期的な見直しや改善を行なっていきましょう。
営業ノウハウの共有
ハイパフォーマンスな行動特性や成果が見えてきた施策パターンを見つけたら、他の営業担当にもノウハウを共有することでチーム全体の営業力を高めていくことができます。
営業力が高い人材はどこの企業も欲しい人材であるため、仮に特定の営業担当が抜けてしまってもダメージを抑えるという意味でも組織として営業力を高めていくことが重要になってきます。
全社的に営業ノウハウの共有を積極的に行っていくことで、従来、営業担当が抱いていたような「ライバルの出現を恐れる」などの感覚を取り除きつつ快くノウハウ共有などもできるようになるのではないでしょうか。
セールスイネーブルメントを取り入れて営業力を高めていこう
セールスイネーブルメントは欧米の法人営業での事例が多く、そのほとんどが営業力と売上を比例して向上させることに成功しているケースです。
日本企業においても昨今の環境変化により、これからセールスイネーブルメントに取り組み始める必要性を感じている企業が増加すると考えられますので、営業部門に少しでも課題を感じている企業があれば、この仕組みを取り入れることも検討してみましょう。
そのためにもまずは、自社の営業体制の現状把握を行い、セールスイネーブルメントを浸透させていくために会社の方針として取り組むことが成功の鍵と言えるのではないでしょうか。