2017年にカナダから日本に本格参入したECサイト構築プラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」が近年大きな成長を続けていることから注目を集めています。
そこで今回は、いま勢いのあるShopifyを利用しているD2Cブランドに焦点をあてて、ECサイト事例をご紹介いたします。
目次
Shopifyとは
Shopifyは世界175カ国、170万店舗以上のストアで利用されている世界最大のECプラットフォームです。
グローバルでの流通総額は2,000億USドル(約20兆円)を超えており、さらに今後も増加していくことが見込まれています。
元来は海外での販売に適したプラットフォームで多言語対応や決済などの機能が優れていることから、日本ではグローバル展開を目的として、国内ECショップとは別に、海外向けサイトをShopifyで展開する企業も多く見受けられます。
D2Cとは
D2Cとは「Direct to Consumer」の略称で、自社で直接ユーザーへ販売を行うビジネスモデルです。
近年は、小規模事業者だけでなく大手メーカーからも注目されています。
従来の直販とD2Cの違いは、D2Cでは消費者に直接販売するというビジネスモデルにIT技術が加わることで、自社のECサイトで販売するケースが多い点です。
また、D2Cと似ている業態としてSPA(製造小売)がありますが、D2Cは取引形態のことであり、SPAは主にアパレルの業態の一種になります。
業態としてはD2Cに近いものですが、SPAは自社で企画・製造・販売まで一貫して行うのに対して、D2Cの場合はOEM(製造は他の会社に委託)している場合が多いです。
例えば、SPAの代表としてはUNIQLOやZARAが挙げられますが、一方でD2Cの中にはアパレルだけでなく食品や雑貨など他の業界も多く含まれています。
また、SPAはネット販売だけではなく店舗ビジネスがメインの場合が多いですが、D2Cはネット販売がメインの場合が多いです。
Shopifyを利用した国内人気D2CブランドのECサイト事例 6選
ここからは、Shopifyを利用した国内の人気D2CブランドのECサイト事例を見ていきましょう。
今回は、6つの事例をご紹介します。
BASE FOOD
BASE FOODはベースフード株式会社が運営しているECサイトで、2017年に世界初の完全食パスタのBASE PASTAを発売を開始しました。
元々はクラウドファンディングからスタートしてShopifyでECサイトを構築されていますが、今では、消費者に直接販売するD2Cモデルとしても知られています。
Shopifyを選んだ理由は「顧客体験の向上に必要な拡張性があること」と「UIの使いやすさ」がポイントだったそうです。
また、「Shopifyブログ」では、
「ほとんどの日本の会社のASPは他のアプリケーションと連携するという前提で作られていませんので、何か要望があってもできない事は開発しなければいけないとか、あきらめるしかないことが多いんですけれども、Shopifyは周りのアプリがどんどん進化しているので、常にECの世界の成功事例を試すことができるというのが一番の良いところだと思っています」
ともコメントされています。
土屋鞄製造所
土屋鞄製造所はランドセルや大人向け鞄などの革製品を企画・製造・販売する老舗ブランドです。
2000年代に入ってからEC事業にも参入し、リニューアルを重ねながら成長を遂げてきました。
他社ブランドの事例や海外のD2C企業の状況もリサーチしたうえで、Shopify導入を決めたようです。
ブランドが成長していく中、顧客満足とブランド価値を高めていくために数年に一度のペースでリニューアルを行っていましたが、さらに時代に合ったプラットフォームの選定と社内体制の構築に挑むことになりました。
Shopifyのアプリストアで提供されている拡張性の高いアプリを活用することで、さまざまなツールが使えることや、検証から実装まで短時間でできることがメリットであると感じ、他社ブランドの事例や海外のD2C企業の状況もリサーチしたうえで導入を決めたようです。
同時に、なるべく自走・内製化できる社内体制づくりにも力を入れて取り組まれているようです。
参考:ECのミカタ(2021年4月)「土屋鞄製造所が成し得た【Shopify Plus】によるEC運営 事業を大きく前進させるために必要な視点」
COHINA
画像引用:https://cohina.net/
COHINA(コヒナ)を立ち上げたのは、低身長であるために服選びに苦戦していたアパレル業界未経験2人の女性です。
事業を始めきっかけは、「小柄な女性にぴったりサイズの洋服を届けたい」と思ったからだと言います。
創業当時は、400人だったCOHINAのインスタグラムのフォロワー数は、現在では20万人以上に達しており、インスタライブなどを頻繁に開催することでユーザー側も自由に意見を出し、ユーザー同士の情報を共有や日々の喜びを分かち合う場として活用することで、ファンを増やしています。
創業者らがShopifyを選択した理由としては、「初心者でも利用できる簡単さ」と「海外進出にも向いている」ことを挙げています。
現在は、海外進出を見据えて決済方法を豊富に用意するだけではなく、メール配信用のアプリやお気に入り登録用のアプリを導入することで従業員だけではなく、ユーザーも使い勝手の良いサイトになっています。
参考:Shopifyブログ(2020年1月):小柄な女性にぴったりサイズの洋服を届けるCOHINAの想い | マーチャントストーリー – COHINA
Nagi
画像引用:https://nagi-jp.com/
1枚でも過ごせる吸水ショーツを展開するフェムテックブランド「Nagi」の発売開始は2020年5月、すでに多くのリピーターを獲得されています。
Shopifyの決め手は越境ECを考えている中で一番マッチしたこと、支払いサイクルが早いこと。
日本語適応がまだ完璧ではないこともあり、配送部分で住所の変換などスムーズにいかない場面もありますが、この料金体系で分析ツールが非常に充実しており、POSやメールマガジン機能など連携できることも多く、総じてとても満足しているとのことです。
煎茶堂東京
煎茶堂東京は、「美味しいお茶がある暮らし」をご提案する、銀座で創業したシングルオリジン煎茶専門店です。
一般的に出回っているブレンド茶のように生産者も消費者も中身がわからない商品ではなく、それぞれのお茶の違いや良さが評価される新しい日本茶を生産者とともに作っています。
日本茶そのものを売るのではなく、日本茶を楽しむ生活を提供して定着させようとする煎茶堂は、お茶のパッケージ、急須や茶器などの小道具に日本文化の美学であるミニマルなデザインを採用しています。なかでも、現代人のライフスタイルに合わせてデザインされたシンプルな急須は煎茶堂の看板商品です。
また、煎茶堂東京ではShopifyを導入することでリアル店舗とECサイトの在庫情報などをシームレスにすることで、ユーザーへより幅広いコミュニケーションを図ることができるようになったそうです。
BONIQ
画像引用:https://boniq.store/
累計で3万台を売り上げた低温調理器の「BONIQ(ボニーク)」は、クラウドファンディングからスタートし、現在はECの販売チャネルとして自社サイトとAmazonそしてYahoo!ショッピングで展開しています。
自社のECプラットフォームにはShopifyを使用し、サイト構築初月から売上数百万円、1年で数千万円を達成。また、出荷・受注業務ではEC自動出荷システム「シッピーノ」を活用し、ネットショップの物流に関わる業務を全て自動化することで、売り上げを伸ばしながらブランディングも強化しています。
参考:Shopifyブログ(2020年6月)「3万台を売り上げた低温調理器「BONIQ(ボニーク)」 自社EC開設1年で大成長の裏にはShopifyとシッピーノあり」
今後も様々なD2CブランドとECサイトが増えてくる
新型コロナウイルスの影響もあり、今後もECサイトでの購入する比率は高まっていくことが予想されています。
また、ユーザーの購買行動にも、商品やサービスをSNSやサイトで自ら調べて選別する傾向が強くなっており、大量生産・大量消費型からストーリー性やブランディング、最近ではサステナビリティを重視して購入をしている方も増えています。
D2Cブランドは自社ECサイトを構築するケースがほとんどですが、0から構築すると費用や期間が膨らんでしまうため、まずは「手軽」・「スピーディ」にECサイトを始められるShopifyを利用する企業も増えてくるのではないでしょうか。