多くの企業でWebサイトやアプリの分析に利用されている「Google Analytics」ですが、2022年3月16日にGoogleから現行のUniversal Analytics(以下、UA)のサポートが2023年7月に終了することが発表されました。
この件に関して、いざ対応するとなると何から手をつければいいのかお悩みのご担当者様も多いのではないでしょうか。
さらに、GA4(Google Analytics 4)への移行にあたって、今までUAとMAツールなどのマーケティングツールを組み合わせて運用していた設定の移行やツールの併用方法など、変更範囲が不透明なため、多くの不安を抱えているマーケティングご担当者も多くいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、新しい規格である「GA4の概要」と「GA4とMAツールを組み合わせてできること」について解説いたします。
目次
GA4とは
「GA4(Google Analytics 4)」とは2020年10月にGoogle Analyticsの新規格としてローンチされたサービスとなります。
参考:https://support.google.com/analytics/answer/10089681?hl=ja
実は、GA4は正式にリリースされる前の2019年に「アプリ+ウェブプロパティ(App+Webプロパティ)」として発表されていました。
GA4のサービス特徴としては、主に以下の3つが挙げられます。
- プライバシーが重視され、今後起こりうる変化に対応可能
- 機械学習を活用し、カスタマージャーニーに関するインサイトをプラットフォームとデバイスをまたいで分析
- Google の広告プラットフォームとのシームレスな統合が強化され、キャンペーンのパフォーマンスの最適化とマーケティングの ROI の向上を実現
要約すると、近年の個人情報保護強化の観点における対策と合わせて、Webサイトとアプリの両方をシームレスに計測できることがGA4のメリットとして挙げられるでしょう。
UAとGA4の違い
では、次に今までのUAとGA4の違いについて見ていきましょう。
従来のUAとGA4で変更があったポイントとしては、主に以下の4つが挙げられます。
- Cookieに依存しないトラッキング仕様
- Webとアプリの横断
- データの利活用(BigQuery/ Googleデータポータル)
- ユーザー(顧客体験)の理解
それぞれのポイントについて見ていきましょう。
Cookieに依存しないトラッキング仕様
GA4の1つ目の特徴として挙げられるのは、CookieやIDを利用できるかどうかにかかわらず計測が可能ということです。
これまでのUAでは、Cookieに依存した方法でアクセスログデータのトラッキングが行われていました。
しかし、改正個人情報保護法(2022年4月施行)を始めとした近年のプライバシー保護意識の高まりによって、Cookieを用いたデータトラッキングの可用性が狭まりつつあります。
今後、さらにCookie規制が高まっても、GA4においては個人情報に配慮された、質の高いトラッキングデータを蓄積することが可能だと考えられるでしょう。
Webとアプリの横断
2つ目の特徴としては、Webサイトとアプリのデータ計測を横断的に行えるようになった点です。
これまでWebサイトはGoogle Analytics、アプリはGoogle Analytics. for Firebaseと別々の計測方法をとる必要がありましたが、GA4では、プロパティの中にデータを蓄積する「データストリーム」という新しい概念を導入しています。
データストリームの概念を取り入れることでWebサイトは「ウェブストリーム」、モバイルアプリは「アプリストリーム」の単位で計測され、双方同じディンメンションや指標で集計することが可能になりました。
データの利活用(BigQuery/ Googleデータポータル)
3つ目の特徴は、Google Cloud Platformサービスの1つのデータウェアハウスツールのBigQueryや、BIツールであるGoogleデータポータルとのデータ連携が可能になったということです。
UAでは、有料プランのUA360でのみBigQuery連携に対応していましたが、GA4では無料プランでも連携が可能になりました。
これらのサービスを組み合わせることで、GA4のデータを更に活用することができます。
ユーザー(顧客体験)の理解
最後の特徴は、ユーザー理解を深めることができるようなサービス設計になったことです。
UAはページを軸としたトラッキングが行われており、どのページが人気かといった視点やどのページで離脱が多いかといった、ページやセッションに注目したトラッキングでした。
一方、GA4はユーザー行動やエンゲージメントを軸としたイベントトラッキングがメインに置き換わります。
ターゲットとなるユーザーの特徴を分析し、サイトの目的に合ったユーザー層がどれぐらい存在するか、サイトは顧客体験(CX)に貢献できているか、といった評価が可能になりました。
参考:トライベック株式会社 ジャーナル(2022年3月「GA(UA)が2023年7月にサポート終了! GA4とその先のデータ活用で顧客体験を理解しよう(2)」
GA4とMAツールの違い
MA(Marketing Automation)ツールは2000年代前半頃からアメリカで普及し始め、日本での導入は2015年頃から増加してきました。
MAツールの主な機能としては、Webフォームの生成やリード管理、トラッキング、スコアリング、シナリオ設計、キャンペーン、メール配信機能などが挙げられますが、これらを活用することで、展示会やイベントといったリアル施策のタッチポイントや、メルマガなどのデジタル施策のタッチポイントまで可視化することもできます。
元々UAが〝Webページ”を軸としたユーザー行動を図ることができるツールだとすると、MAツールは“ユーザー”を軸としたユーザー毎の行動を把握することができるという点に違いがありましたが、上述のようにGA4でもユーザーを軸とした分析を行うように変更があったため見方が少し変わっています。
具体的に言うと、GA4はユーザー毎、ユーザー群のイベントトラッキングを元にしたデータ蓄積と分析は行えますが、そのユーザーが「誰なのか」までは相応の設定を施さなければ特定できません。
一方で、MAツールの場合は会員登録や顧客となっているユーザーの場合には、誰がどのような動きをしたのか、いつ何を購入したのかといったユーザー毎の個人情報を含んだデータまで取得することが可能です。
また、GA4はデータ分析においては非常に高い効果を発揮しますが、ユーザーに対してメールを送れるようなコミュニケーション機能はないため、GA4単体では直接売上をあげることはできません。
MAツールを合わせて使うことで、どのユーザーが自社のサービスにどれくらい興味があるかを測定(スコアリング)することができ、ユーザー個々人の興味関心度合いに合わせたコミュニケーションを行うことでリードの育成や売上の増加を行うことが可能になります。
GA4とMAツールを組み合わせてできること
GA4とMAツールを組み合わせることでWebサイトとアプリの横断的な分析、ユーザー分析に加えてユーザーの行動やスコアリングを元にしたコミュニケーションを行うこともできるようになります。
例えば、MAツールの見込み顧客のステータスを測るスコアリング機能を使うことで、見込み顧客をナーチャリング(育成)し、長期的に顧客を管理できるようになります。
GA4のデータ分析機能を活用して、ユーザーエンゲージメントが獲得しやすいタイミングをマクロ・ミクロ視点を洗い出すことで、必要なときに必要な情報が届くようにOne to Oneメールを配信するなど施策を運用していくことでより受注確度の高い顧客を育成するような使い方も可能です。
さらに、GA4で連携が強化されたBigQuery・データポータルを駆使することで、ツール間のデータ統合やビジュアライズ、複合的なセグメントの作成など、より発展的なデータ活用にもつなげられます。
GA4とMAツールの利用用途を明確にして使いこなしてみよう
分析ツールということと、役割が似ているGA4とMAツールですが、できることでは大きく異なる部分もありますので、それぞれの長所を生かして両方のツールを活用していくことが理想的です。
GA4は一定規模までのサイトの場合には無料で使えることが非常に魅力的ですが、MAツールは有料サービスのものが多いので自社で使いこなせるかを検討してから導入してみても良いでしょう。