近年では日本企業でもマーケティングオートメーションツール(以降、MAツール)の導入が増えており、導入事例も多くなってきました。
そこで今回は、2021年最新の日本におけるMAツール市場の最新動向についてご紹介いたします。
目次
MAツールの歴史
MAツールの歴史は1992年アメリカのUnica社の提供が最初だと言われており、現在ではIBM社の傘下に入っています。
元々はSFA(営業支援ツール)との連携を行うためにBtoB企業を対象としたサービスとして生まれて以降、米国では2000年代から本格的に普及が始まり、日本では2014年頃より徐々に広まり始めてきました。
Googleトレンド で 2004年 から 2021年 までを対象として「マーケティングオートメーション」をキーワード検索してみたところ、2017〜2018年をピークに徐々に減少傾向ではあるものの依然として高い水準の検索数が続いています。
参考:Google Trends 検索ワード「マーケティングオートメーション(2014/1/1~2021/10/29)」
日本におけるMAツールの市場動向
続いては、日本国内におけるMAツールにおける市場規模の予測を発表している会社の分析結果を見ていきましょう。
株式会社矢野経済研究所
1社目は矢野経済研究所の発表です。2019年の国内MAツールの市場規模が402億円であったと発表されました。
2024年には940億円まで市場が拡大すると予測しており、市場が拡大している要因としては主に2つを挙げています。
1つ目は、コロナ禍で顧客行動のオンライン化が急激に進み、オンライン上での顧客行動の把握や顧客接点の創出に向けたデジタルマーケティングツールの重要性が高まっているということです。
企業内ではオンラインでの営業やマーケティング強化に向けた取り組みが加速しており、感染拡大防止の観点から在宅勤務や外出自粛などが広まったことで従来通りの対面営業は実施しづらい状況にあることから、今後もこの傾向は続くものと予想されます。
2つ目は、企業側がユーザーの商品購入前から購買後までの行動プロセスにおける顧客接点において、顧客一人ひとりにパーソナライズされた体験を提供し、顧客体験の質の向上に取り組んでいることがあります。
近年では契約(販売)して終わりではなく、契約後のカスタマーサクセスに力を入れている企業が増えていることも注目されます。
株式会社アイ・ティ・アール
2社目はアイ・ティ・アール(以降、ITR)です。
ITRの発表によると、統合型マーケティング支援(MAツール)市場の売上金額は2018年度の売上金額は174億8,000万円、前年度比32.4%増と大幅な増加となっています。
2018年度はBtoB向け市場が前年度比32.6%増、BtoC向け市場は同32.3%増と両市場ともほぼ同等の伸び率となりました。
さらにITRでは、2023年度のBtoB向け市場は140億円、2018~2023年度の年平均成長率(CAGR)は15.4%、BtoC向け市場は230億円、同16.7%を予測しています。
このITRの予測はMAツール導入済みの大企業を中心にSFAやCDP(Customer Data Platform)、CMSとの連携が進み、導入範囲が拡大していることが関係していると予想されます。
特に、BtoB市場では営業人員不足の解消と業務の効率化を目的にデジタルチャネルを活用した見込み客へのアプローチが重要視されています。
また、年商規模が小さいBtoC企業での新規導入も増加傾向にあるようでした。
上記2社を比べると、数値は倍以上の差が出ておりどちらが正確とは言えませんが、市場の成長が見込まれるという点では一致していると考えられると言えるでしょう。
日本におけるMAツールの導入動向
続いて、MAツールがどの位企業で利用されているのかについての調査結果を見ていきましょう。
株式会社Nexalによると、調査対象58万社においてMAツール導入数は6,866サイト、国内企業のMAツール導入率は1.2%という結果を発表しています。
上場企業だけで見ると調査時点の3,824社中、導入数は431サイト、上場企業のMAツール導入率は11.3%という結果でした。
複数のMAツールを実装しているケースも多くみられたため、単純積み上げ方式ではなく重複処理を行ったデータとなります。
また、上場企業におけるMAツール導入率は、1年前の2020年1月の8.9%と比較すると2.4ポイント増加していました。
Naxalの調査によると上場企業の1割が導入していることになり、デジタルマーケティングの必須ツールとしてMAツールが各社に浸透してきていることを表しています。
日本における今後のMAツール市場の展望
上述したように、今後もMAツール市場は拡大傾向が続くことが予測されています。
顧客体験の質の向上や効率的な営業活動の展開に向け、MAツールを利用するユーザー企業数は増加すると調査を実施した企業は見込んでいるようです。
また、企業ではMAツールなどのマーケティングツールの導入だけではなく、デジタルマーケティング施策の効果をより高めるため従来のメールやWebコンテンツだけでなく、Web接客やLINE、SMSなど新たなチャネルへの対応ニーズも高まっています。
今後は、AIを活用したセグメンテーションの精度向上やより正確な顧客傾向や嗜好の把握、分析の精度向上、顧客の行動予測などがますます活発になるとともに、オンラインとオフラインの融合も加速していくと見られています。
MAツールを導入してデジタルマーケティングを強化しよう
日本でも多くの企業でマーケティングやセールスプロモーションのデジタル化に合わせてMAツールの導入が進んでいますが、上場企業でもまだ約9割の企業が導入していないという調査結果も出ていることから、今後は加速度的に導入が増加していくことが予想されます。
また、既に導入している企業でもMAツールを利用して効果が出ているかどうかをしっかりと把握した上で、より効果的な施策へと改善していくことが重要です。
新型コロナウイルスの影響によってオンラインビジネスの重要性はこれからも高まっていくことが予測されますので、導入をしていない企業は検討してみることがおすすめです。