多数のサイトで導入が進んでいるカゴ落ちリマインド。様々な企業がカゴ落ち対策に対応したサービスを提供しています。
しかし 一口にカゴ落ちリマインドといっても、ツールによって仕様は様々です。
今回は、「そろそろ自社でも対策しないとなぁ」と考えている担当者に限らず、もう少し違ったツールは無いかなと考えている方に向けて失敗しないツール選びをご紹介します。
目次
カゴ落ちリマインドとは
カゴ落ちリマインドはカート放棄リマインドとも呼ばれ、ユーザーがカートに投入してまだ購入していない商品を一定期間の後にメールやLINEなどのメッセージに挿入してリマインドするOne to Oneマーケティングの一つです。
カートに入れる = 購買意欲が高いため、一斉配信と比べると開封率、クリック率、購入率とも高いのが特徴で、xorss data利用企業のカゴ落ちリマインドのこれら指標も高い傾向にあります。
一斉メルマガとカゴ落ちリマインドにおける平均的な指標
指標 | 一斉メルマガ | カゴ落ちリマインド |
開封率 (ユニーク開封数÷配信数) |
10〜30% |
30〜70% |
クリック率 (クリック数÷配信数) |
2〜15% |
10〜20% |
購入率 (購入数÷クリック数) |
2〜15% |
5〜23% |
出展:xross data利用企業の実態調査(n = 15サイト)
もちろん業種や商品属性、メルマガ頻度やエンゲージメントによっても異なりますが、この数字を見ると期待値は高くなることでしょう。
ツールによる仕様の違い
このように効果が高いとされるカゴ落ちリマインドですが、施策を実施するにあたってツール選定時に注意しなければならないのがツールの仕様です。ツールの仕様を理解していないがために、導入時に考えていたよりもシステム改修が大きくなったり、当初想定していたカゴ落ち施策が実施できなかったり、結局導入できなかったというケースはよくあります。
では、どのようなことに注意すれば良いのか?これまでに経験したことを踏まえてご説明します。
配信チャネル
選定するツールがどの配信チャネルに対応しているか確認します。
カゴ落ちリマインドの一般的な配信はメールですが、最近ではLINE@を販促に活用しているECサイトも少なくありません。まずはメールでやってみて、効果があればそのうちLINEやWEBプッシュなどの配信チャネルに展開しようと考える担当者は多いと思います。
もしツールがメールにしか対応していない場合は、LINEでのカゴ落ちリマインドを実施するときにLINE配信は別ツールを導入するか、チャネルが豊富なツールに乗り換える必要が出てきます。下記のデータ連携にもありますが、ツールが変わるとデータ連携方法も変わるため再度システム開発コストが発生します。さらにツール乗換の場合はこれまで蓄積したデータが活用できなくなります。
従って、ツールを選ぶ際には、自社の将来的な施策構想にマッチした配信チャネルに対応しており、なおかつ配信チャネルごとにオプションを追加できる契約体系のサービスを利用すると良いでしょう。
データ連携
カゴ落ちリマインドは、ユーザーがカートに投入した商品をメールやLINEなどのメッセージに挿入して配信を行います。
ここで必要になる情報は誰が、どの商品をカゴに入れて購入していないかです。
ECサイトパッケージで既にカゴ落ちリマインド機能が付いている場合は、余計なシステム開発工数を掛けずに済むのでその機能を使えば良いでしょう。会員情報も商品情報もすでにECサイトパッケージに存在しており、誰がどの商品をカート放棄状態にしているかECパッケージが把握しているので、手間無く低価格で施策を開始することができます。
もしECサイトパッケージにカゴ落ちリマインド機能がついていない場合は、別のツールを導入することになります。
会員マスター
まず、メールやLINEメッセージを配信するということは、導入するツールにメールアドレスやLINE IDが存在しなければなりません。従って、会員マスターのインポートを行うことが大前提となります。
インポートも、管理画面から手動でインポート、APIインポート、SFPTサーバ経由インポートなど、様々なインポート機能が実装されている方が、今後の運用のしやすさを考えた場合に安心です。
また、会員マスターインポートで重要なのは、インポートできる項目が自由に設定できることです。項目数に制限があると、セグメント条件として利用したい項目すべてをインポートできないため項目を使い回したりします。これは運用時の事故発生率が高くなる要因です。カゴ落ちとは直接関係はありませんが、ツール選別ポイントの一つとしておきましょう。
すでにメール配信サービスを利用していて、カゴ落ちリマインドメールも既存のメール配信サービスで行いたいという場合は、ツールが容易に自社で利用しているメール配信サービスとシステム連携できるか確認してください。
LINE IDは、LINE Loginを自社サイトに実装することで自社ECサイトの会員IDとLINEで友だちになったユーザーのLINE IDを紐付けて自社DBに保持することができます。もしLINE IDを自社で保有していない場合は、Webhookを活用することが挙げられます。
Webhookの説明はここでは割愛しますが、ツールがWebhookに対応している場合は会員マスターインポートでLINE IDを登録しなくてもツールにLINE IDを記録することができます。ツールがWebhookに対応しているかも選別ポイントの一つとして挙げておくのも良いかと思います。
商品マスター
カゴ落ちリマインドは、ユーザーがカートに入れた商品情報をメールやLINEメッセージに挿入して配信します。カゴ落ちリマインドに挿入したい商品情報をツールに登録しておくことが必要となります。
ツールへの商品情報登録方法は、商品マスターインポート連携とタグ連携があります。
商品マスターインポート連携は、その名の通り商品マスターをツールにインポートする方法です。
一般的にツールには商品マスターインポート機能がありますので商品名や商品ページURL、商品単価、キャッチコピーなどメッセージに挿入したい情報をインポートして商品データベースを作り、商品データベースに登録されている情報を挿入してメッセージを配信します。HTMLメールやLINEのカルーセルタイプで配信する場合は、商品画像のURLも必要となります。
サイトに掲載されていない商品情報を挿入したり、在庫や販売期間による商品の配信制御が行えるメリットがある一方で、商品マスターインポートのシステム連携のためのコスト負担というデメリットがあります。
タグ連携は、メッセージに挿入したい商品情報をタグで連携する方法です。
自社サイトに掲載されている商品名や商品単価、説明文、画像URLをタグで連携してユーザーのカート情報と紐付けて管理し、その情報をメッセージに挿入して配信します。
商品マスターをインポートするためのシステム連携が必要がないため、手軽に施策をはじめることができるメリットがある一方で、自社サイトに掲載されている情報しかメッセージに差し込みできないというデメリットもあります。
xross dataをご利用の企業様では、カゴ落ち対策だけを実施されるサイトではデメリットを承知の上でタグ連携で開始する企業が圧倒的に多いです。
カゴ落ちリマインドは、カゴ落ちから短期間で配信することが多いため在庫や販売期間をあまり気にしなくてよいのと、メッセージに挿入する情報は商品名や画像、単価程度に抑える傾向が多いという理由があるためです。ただし、カゴ落ちリマインドだけでなく過去の購入履歴からリマインドするサイトの場合は、商品マスターインポートを実施して在庫数や販売期間を参照して商品の出し分けを行うようにしています。
ツールを使ってどのような施策を行うのかにもよりますが、商品マスターインポート連携、タグ連携双方に対応しているツールを選択すると安心でしょう。
会員IDとクッキーID
誰がに該当する会員のデータは最も重要になります。
カゴ落ちリマインドを実施するにはツールが発行するタグをサイトに導入します。タグはCookie IDを発行してユーザー(正確にはブラウザ)に一意の識別子を与えます。このCookie IDとサイトでの行動を紐付けて、どのCookie IDがどの商品をカートに投入して購入していないかをトラッキングしてカゴ落ちユーザーとその商品を特定します。
Cookie IDだけでは個人を特定できずメッセージ配信ができないため、会員タグと呼ばれるタグの機能で会員IDとCookie IDを紐付けして、”このCookie IDはこの会員ID”という紐付け情報をツール側で管理するのが一般的です。
会員タグによりCookie IDと会員IDを一度紐付けさえすれば、次回訪問時にログインしていない状態でもCookie IDか会員IDを特定できることを確認しましょう。
オートログインが存在しないサイトの場合は、ユーザーが再訪問したときは未ログイン状態のはずです。通常はログインせずにカートに投入する行為をするので、Cookie IDだけで会員を特定できるツールでないとリマインド系の施策は配信母数が極端に少なくなり効果が見込めません。
カートシステムによっては、会員IDが取得できるのが購入完了画面だけというケースも少なくありません。つまり、購入完了したユーザーのみCookie IDと会員IDの紐付けができますが、この場合もCookie IDと会員IDの紐付け率が極端に少なくなり効果が見込めません。
これはツールというより、自社でご利用のカートシステムの仕様によるものですが、ツール選定を行うにあたり自社利用中のカートシステムで、会員IDがどこの画面で取得できるか確認した方がよいでしょう。
配信タイミング
扱っている商材にもよりますが、カゴ落ちリマインドはカート放棄後、短時間に配信するほど効果高いと言われています。
ツールによっては最短で5分後に配信可能と謳っているものもあります。
某コスメ系のECサイトを対象にした検証でも、翌日の配信より1時間後に配信することで効果が高くなることが判明しています。
カゴ落ちから配信までの時間による効果の差異
配信タイミング | CVR |
翌日 | 2.94% |
3日後 | 1.01% |
1時間後 | 15.15% |
このように短時間(少なくとも1時間後)で配信できるツールであるかの確認が必要です。
また、単純に1時間後に配信できるだけでなく配信タイミングを任意に設定できるかも確認した方がよいでしょう。例えば1時間後、3時間後、6時間後、翌日を比較し、自社にとって効果の高いタイミングを掴んで実施することが望ましいためです。
ステップ配信対応
カゴ落ちリマインドを1回の配信だけで済ませる必要はありません。
例えば1時間後に配信→3日後に配信→1週間後に配信というように、一度目の配信で購入しないユーザーには何回かに分けて配信することで購入喚起を促すことも重要です。
また毎回同じメッセージを配信するのではなく、ステップごとに異なるメッセージで配信することが肝要です。
ステップ配信の例(しつこさ軽減対策)
ステップ | タイトル | メッセージ内容 |
1時間後 | お買い忘れはありませんか? | カート放棄した商品のみ掲載。直接的に直近の興味商品をリマインド。 |
3日後 | ご来店をお待ちしております |
カート放棄した商品のみ掲載。これまでに●●様がご興味を持った商品をオススメしております。 |
7日後 | オススメの商品があります |
すでにカート放棄した商品は別サイトで購入しているケースもあることを想定し、カート放棄した商品+自社のオススメ商品情報をメールに入れてリマインド。 送料無料のクーポンや購入商品ランキングなどを入れることも効果的。 |
このように同じカゴ落ちリマインドでもステップごとに異なるメッセージで配信できるツールであるか確認しましょう。
また、ツールにA/Bテスト機能が付いていれば、カート放棄した商品すべてを掲載するパターンと最後にカートに投入した1商品だけを掲載するパターンに分けて配信し、効果の高い方に寄せることも実現できます。
フリークエンシー設定
フリークエンシー設定とは、同じユーザーに何度も同じメッセージが配信されないように配信頻度を制御できる機能を指します。
例えばユーザーAが、毎日商品をカートに入れて購入しない行動を取った場合、ユーザーAには毎日カゴ落ちリマインドが配信されます。しかも、ユーザーAがメール、LINE双方でパーミッションを取っていると2つのチャネルで同じようなメッセージが届くことになります。もしカゴ落ちリマインドだけでなくブラウザ放棄リマインドやお気に入りリマインドなど複数施策を実施していた場合は別のメッセージも届きます。これだと五月蠅く感じて配信解約をするユーザーが増えてしまいます。
一度メッセージを配信したら、n日間はメッセージが配信されないように設定できるツールであることがベターです。
配配信チャネル全体 or 配信チャネルごとに設定可能か、施策ごとに設定可能かを確認しましょう。誕生日メッセージなどメッセージの種類によっては他施策の配信有無に限らず必ず配信したいシーンもありますので、フリークエンシー設定を無視して配信ができることも重要です。
その他チェックポイント
カゴ落ちリマインドからの遷移先URLはどこか
ツールによってはカゴ落ち状態だけを検知してカート画面にリンクさせるメッセージを配信するだけのものがあります。カート画面はセッションタイムアウトで商品がクリアされる仕様のサイトも多く、カート画面に遷移させるだけだと、そもそもカゴ落ちリマインドが成立しません。
セッションタイムアウトでカート内容がクリアされるサイトの場合は、商品詳細画面にリンクさせることが一般的ですので、リマインドメールからの遷移先を自由に決めることができるかなど、自社ECシステムのカート仕様とマッチしているか確認します。
複数商品を差し込み可能か
ユーザーA=2商品、ユーザーB=1商品、ユーザーC=5商品などカート放棄する商品数はユーザーによって異なります。
ユーザーによって、メッセージに差し込める商品数を可変にできるかは重要なポイントです。もし可変対応していないツールの場合は1商品しかメッセージに差し込めなかったり、5商品を差し込めるテンプレートなのにカート放棄している商品が1商品のみの場合、残りの4商品のエリアが空白になりメッセージのレイアウトが見栄えの悪いものになったりします。
細かなところですが、この点も確認しておくべき項目です。
カゴ落ちの商品の制御が可能か
ECサイトによっては、A商品を入れると組み合わせ商品Xが自動的にカートに入るケースもあります。このような組み合わせる商品はカゴ落ちリマインドに挿入したくないというニーズに対応できるか確認しましょう。
カゴ落ち商品の取得仕様はツールによってことなり、カート画面にカートに入っている商品をタグで埋める方法と、カートに入れるボタンをクリックしたら該当商品をカート投入として見なす方法のものがあります。
前者の場合は組み合わせ商品Xがカート投入情報として記録されますので、商品の差し込みが制御できるツールでないと導入は難しくなります。
キャリアアドレスとPCアドレスで配信を分けられるか
docomo.ne.jpやezweb.ne.jpなど、ガラケー時代の名残でキャリアアドレスを利用しているユーザー母数は少なからず存在します。これらキャリアアドレスは、スマホを利用していてもキャリアから提供されているメールアプリの受信制限で1通あたりの最大受信サイズが小さいままです。iPhoneやGmailなどのPCメーラーに配信するコンテンツと同じメールを送信する場合、受信できなかったり受信できても画像が読み込めなかったりとユーザービリティを損なうケースがあります。
キャリアアドレスに配信する場合は、テキストメールや画像差し込みをしないHTMLメールにするなどの対応が必要で、配信時にキャリアアドレスとPCアドレスを分けて設定できる機能があることを確認しておきましょう。
まとめ
このようにカゴ落ちリマインド用のツール選定で確認すべきチェックポイントは多岐に渡ります。カゴ落ちリマインド施策を実施できるツールは世の中に数多く存在していますが、このチェックポイント全てをクリアできるツールを選択することで、失敗する確率が低くなることと思います。なぜなら、ここに掲載のある機能に対応しているツールは、導入社数が多くあるために失敗の経験や顧客からの要望に応えているツールであることが類推されるためです。
この情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。