大企業を中心に導入が進んでいるマーケティングオートメーション(MA)。
最近では機能特化したマーケティングオートメーションサービスや、比較的お手頃な価格で使えるサービスも増えてきたため、中小・中堅企業でも活用が見受けられるようになってきました。
ただし、その中でも「残念ながら導入はしてみたもののうまく活用できなかった」、「導入を検討していたが、途中で断念してしまった」という企業の声も聞かれます。
マーケティングオートメーションはBtoB企業とBtoC企業では利用用途や目的が異なることから、導入について別々で考えなくてはなりません。
本記事では BtoB企業 が マーケティングオートメーション を導入する際に失敗しないためのコツについてご紹介いたします。
目次
マーケティングオートメーションの始まりはBtoB向けに作られたサービス
マーケティングオートメーションを導入する際に知っておきたいこととして、マーケティングオートメーションはどのような歴史から生まれて、発展してきたかということです。
わざわざサービスの歴史に関して知らなくても活用ができるとも言えるのですが、BtoBに関しては知っておいたほうが導入時に失敗する確率が減ります。
実はマーケティングオートメーションはつい最近できた概念ではなく、1992年にアメリカのUnica社が最初だと言われております。現在Unica社はIBMの傘下に入っています。
参考:IBMサイト UnicaソフトウェアはIBMが提供します
当時はまだネットの普及率が低く、アメリカでもマーケティングオートメーションの利用が拡大することにはなりませんでした。
その後マーケティングオートメーションが再注目されたのは、1999年Eloquaのサービスからです。EloquaはSFAが登場したことによって顧客管理については徐々に効率化され始めてきたものの、SFAでは自ら案件を創出できないことに着目し、マーケティングに必要な機能をパッケージにしてサービスの提供を開始しました。あらかじめSFAとの連携を視野に入れて開発をしていたようです。
これにより、Pardot(現在はSalesforce傘下)やMarketoなどの競合他社もマーケティングオートメーションツールを販売し、マーケティングオートメーション市場が拡大していくこととなります。
Eloquaも2012年に買収されて以来、現在ではOracleの傘下に入っています。
参考:Eloqua
つまり、マーケティングオートメーションは元々BtoBにおけるSFAの補完として、マーケティングに関する作業を効率化することから生まれたということを理解しておく必要があります。
一番重要なことは、マーケティングオートメーションを利用する目的を明確に決めること
マーケティングオートメーションを導入するにあたって、一番重要で最初に行っておくべきことがマーケティングオートメーションを利用する目的を明確に決めることです。
これはマーケティングオートメーションに限ったことではありませんが、何かしらのサービスを導入する際には必ず最初に目的を明確に決めておき、目的にあったサービスを導入するようにしましょう。
目的が曖昧だと導入するサービス選定にもブレが生じやすく、「機能が多そうだから」、「価格が安かったから」といった理由で選んだ結果、目的を達成することができなくなることに繋がりかねません。
BtoB企業がマーケティングオートメーションを利用する目的の例で言えば、
- 「新規顧客獲得のためにマーケティング業務を効率化する」
- 「見込み顧客に優先順位をつけて営業リソースを最適化する」
- 「アナログ対応していたメールマーケティングを自動化させる」
などが挙げられます。
目的は一つでも良いですし、複数あっても良いですが、複数ある場合には優先順位をつけておきましょう。
マーケティングオートメーションを利用した用途を決める
マーケティングオートメーションを利用する目的をしっかりと決めた後は、利用用途を決めましょう。
BtoB企業がマーケティングオートメーションを利用する用途の例で言えば、
- 「シナリオに沿ったOne to Oneメール配信」
- 「顧客のスコアリング化」
- 「webサイトに見込み顧客が訪問した際に営業担当者へ通知」
などが挙げられます。
利用用途が決まれば、用途に沿った機能を持っているサービスを選定することができます。用途は複数あると思いますが、サービスによっては実現できない用途もあるかもしれません。
目的と同様にマーケティングオートメーションを利用して「必須のもの」、「できればやりたいもの」、「すぐにやりたいもの」、「いずれはやりたいもの」で分けておくと便利です。
マーケティングオートメーションで自動化できること、できないことを把握する
利用用途が決まった際にやっておくべきこととして、マーケティングオートメーションで自動化できること、できないことを把握する必要があります。
マーケティングオートメーションは残念ながら何でも自動化できる魔法のツールではありません。
マーケティングオートメーションを導入することで自動化できるところにはどのようなものがあるでしょうか。ツールによって機能が異なる部分もありますので、代表的な機能の例でご紹介します。
マーケティングオートメーションで自動化できること
リード情報の収集
新しいリード情報を得ることはリードジェネレーションと呼ばれますが、マーケティングオートメーションツールではサイト上での資料請求やメルマガ登録をする際に情報を入力してもらうことにより、新しいリード情報を自動的に収集します。 マーケティングオートメーションではリテンション施策を行うことがメインの目的となるため、リード情報の収集が肝になります。
リードの行動ログ収集
自社サイトのページ閲覧履歴や閲覧時間、メールの開封履歴といった行動ログを個別のリードごとに自動収集することができます。 これにより、顧客毎にいつどのような行動をとったのかが分かるようになり、リードの行動パターンや興味関心の把握が可能となります。
メール配信
メールを自動配信設定することによるリテンション施策はマーケティングオートメーションの主要な機能の1つです。 例えば初回資料請求してから3日後にステップアップメールを送る、料金表を見た顧客に対してリマインドメールを送るといったことを事前に設定しておき、コンテンツを用意すればメール配信を自動化することが可能となります。
顧客スコアリング
リードの購買情報や行動情報をトラッキングして、顧客スコアリングをすることができます。 BtoBの場合は、セグメント抽出されたホットリードを営業部門に自動的に引き渡すことで、担当者はタイミング良くアプローチすることが可能となり、有利に商談を進めることの手助けとなるでしょう。
マーケティングオートメーションで自動化できないこと
上記でご紹介させていただいたようにマーケティングオートメーションはマーケティング活動の中で多くの部分を自動化することができます。 しかし、すべてのマーケティング活動を自動化できる訳ではありませんので、人が行う部分に関して正しく理解しておく必要があります。
シナリオ設計(マーケティング戦略策定)
マーケティングオートメーションを使ってどのようなKGI、KPIを策定するかをはじめ、集めた顧客情報をどのように活用するか、リテンションしていくかのシナリオ設計はマーケッターが行う必要性があります。 マーケティング戦略の策定含め、シナリオ設計は一番の腕の見せ所と言えるでしょう。
コンテンツ作成
メールを送る際に利用するデザインや広告デザインなどのコンテンツ作成は人が行う必要があります。 最近では過去に流行ったCMのデータをAIに分析させてCMを作る例がありますので、今後は人が作らなくても良い時代になるかもしれませんが、現時点ではマーケティングオートメーションの機能としては一般的に搭載されておりませんので、別途制作する必要があるでしょう。
運用改善
実際にツールを利用してから効果測定を行い、うまくいっている部分ともう少し改善した方が良いと思われる部分も出てくるはずです。 その際にはなぜうまくいっているのか、なぜうまくいかなかったのかを考えて改善を行う必要があります。ツールで改善案を出す機能がついている場合もありますが、最終的な意思決定については(いまのところ)人が行う必要があります。
マーケティングオートメーション導入でよくある失敗例
最後にマーケティングオートメーションを導入する際によくある失敗例をご紹介させていただきます。
マーケティングオートメーションで何でもできると思ってしまった
マーケティングオートメーションを導入することで業務効率やマーケティング効果が高まることを期待するかと思います。
中には手間もかからずに完全自動化することができて、抜群の効果を期待している魔法のツールのように考えられているケースも見受けられました。
上記にある自動化できること、できないことでもご紹介させていただきましたが、一定の部分は自動化することができるものの、効果を高めていくためには設計をしっかりと考える必要性があるのと、運用を行って改善をしていくことが必要です。
多機能すぎて使いこなせないため高額なメール配信サービスになっている
マーケティングオートメーションには顧客管理、セグメンテーション、分析、メール配信、他システム連携など様々な機能が含まれているサービスもあります。
これらをうまく活用するためには事前にシナリオ設計をした上で施策を考える必要性がありますが、リソースを割くことができなかったりサービスが難解で使いこなせなかったりしてしまうことも失敗例として多いです。
その結果として、残念ながら結局メール配信機能しか使えていないといったケースも多く、高いコストをかけてツールを導入した割には費用対効果が合わずに「マーケティングオートメーションは使えない」といったことになりがちです。
自社が行いたい用途と施策を考えた上で、不要な機能がたくさんあって高額なサービスを選ぶよりも、シンプルでも自分達が十分使いこなせるサービスを選定してみるのも一つの手でしょう。
サイト規模や見込み顧客が少なくて費用対効果が見合わなかった
マーケティングオートメーションは基本的には見込み客や既存顧客といった獲得した会員情報を元に、顧客育成と顧客選定を行っていくことが得意なサービスです。
サイトの規模が小さい場合や見込み顧客が少ない場合には、効率化はできるものの売上に対するボリュームが小さくて費用対効果が見合わないケースも出てきます。
このような場合には、マーケティング費用を新規顧客獲得のため広告などに使った方が費用対効果として出ることが期待できます。
効果を高めるために施策を行いすぎて逆効果になってしまった
マーケティングオートメーションを導入してから新しい施策を行うことで効果が出始めてくると、さらに違う施策も行なってみたくなるのではないでしょうか。
例えば配信のタイミングを増やしてみたり、違う施策も織り交ぜてみたり、配信チャネルを増やしてみたりと顧客に接する頻度を高めることで効果を高めていくことが考えられます。
マーケティングオートメーションでシナリオ設計しておけば、さほど労力を増やさなくても多数の施策を行うことも可能です。
しかし、フリークエンシーを高めすぎてしまうと「しつこい」、「煩わしい」と逆効果になってしまうことが目立ち、メール配信の解除や場合によってはサービス・会社のことを嫌いになってしまうことも考えられます。
業界や顧客属性によっても異なりますが、施策は少しずつ増やしていくこととフリークエンシー設定を行い、過度のコミュニケーションは控えるようにしましょう。
コンテンツのノウハウがなく効果がどんどん薄くなってしまった
マーケティングオートメーションで施策を行うことで効果は出ているものの、当初と比べて徐々に反応率が悪くなる場合があります。
解決策としては、
- 一斉配信ではなくOne to Oneの属性に合わせたコンテンツを送る
- 配信タイミングを変えてみる
- テキスト、HTMLなどクリエイティブを変えてみる
- 違う施策と組み合わせてみる
- 思い切ってやめてみる
などが考えられます。
できれば運用をしていく中でABテストを行い、反応率を見ながら改善していくことが望ましいでしょう。
自社で行うのが難しい場合には、一部を外注したり一時的にコンサルを受けてみるのも解決策の一つとして良いかもしれません。
マーケティングオートメーションは導入してからが始まり
マーケティングオートメーションを活用すれば、BtoBにおけるマーケティング活動を効率化することや省人化してコストを下げることも可能な便利なサービスです。
マーケティングオートメーションには分析に強みがあるサービス、コミュニケーションに強みがあるサービスなど特徴がありますので、自社の業界や業務内容に合ったサービスを選定することが非常に重要となります。
マーケティングオートメーションは導入して終わりではなく、導入してからが始まりです。
しっかりと目的を持って導入を行い、日々の運用改善を通じて目的達成に向けて取り組みをしていきましょう。