「カスタマーサクセス」とは、主にサブスクリプション型のビジネスにおいて顧客を成功に導くことにより顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)を最大化することを言います。
今回はMAツールを活用することにより、カスタマーサクセスをいかに効率的に運用することが可能となるかを解説します。
目次
カスタマーサクセスが重要な理由
昨今、シェアリングエコノミーの拡大により、消費者のニーズが「所有」から「利用」へシフトしていると言われています。
そのような流れの中、「1か月いくら」という定額制でサービスやツールを使用できる「サブスクリプション型」のビジネスがBtoB、BtoCを問わず注目されています。
特にインターネット上で提供されるサービスの多くが月額課金の方式を取り入れています。
商品を売ることがゴールの「売り切り型商品」の場合、顧客に商品の魅力を伝えるための提案力や、商談を成立させるための交渉力が重要となります。
一方、サブスクリプション型のビジネスにおいて、商談の成立はゴールではなく、継続的な契約関係の始まりです。
せっかく契約が成立しても、顧客が商品やサービスに満足してくれなければ解約される可能性が高いでしょう。収益を上げ続けるためには、顧客と伴奏しながら成功体験のプランニングをし、製品やサービスを使い続けてもらうことが重要と言えるでしょう。
顧客生涯価値(LTV)の向上
自社の商品やサービスを利用した顧客に成功体験をしてもらうことにより、長期間にわたって契約関係を継続したり、顧客単価を上げることが可能になります。
これにより顧客生涯価値、すなわち取引が開始されてから終了するまでの期間(顧客ライフサイクル)内に企業にもたらされる売上や利益を向上させることができるのです。
また、満足度やロイヤリティを向上させることによって、競合他社の商品やサービスとの差別化を図ることも可能になります。
サブスクリプション型モデルの場合には契約をしてもらうだけでなく、「いかに使ってもらえるか」、「いかに解約されないか」も非常に重要となるのです。
カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違い
従来から、顧客の不満や問題に対応する「カスタマーサポート」部門が多くの企業で導入されています。
では、カスタマーサクセスはカスタマーサポートと何が違うのでしょうか。
カスタマーサポート部門は、顧客が抱えている不満を解決したり、問題を解消することを目的としており、その成果は対応件数や問い合わせを行った顧客の満足度などの指標で計測されます。
一方、カスタマーサクセスは顧客に成功体験をしてもらうことを目的としており、その成果は売上向上や解約率低下などの指標で計測されます。
つまり、カスタマーサクセスは企業の売上を向上させるために顧客に対して能動的なアプローチをする点がカスタマーサポートと異なります。
MAツールとは
サブスクリプション型のビジネスにおいては、契約後の顧客のフォローアップが不十分だったり、商品やサービスの利用状況、満足度、解約リスクが把握できていないという課題にしばしば直面します。
MAの導入によってこの問題をどのように解決できるのか見ていきましょう。
MAは、顧客の誰が、いつ、自社のサイトに訪問し、どのような行動をしたか解析することができるツールです。
さらに、シナリオを設計することにより、顧客の行動に応じてメールを配信するなど一部の業務を自動化することができます。
MAは見込み顧客の育成を行うためのものだというイメージを持っている方が少なくありませんが、既存顧客のフォローにも効果的なツールです。
大手ソフトウェアベンダーの高機能なサービスから専業メーカーによる特化型サービスなど市場の広がりを受けてサービスの種類も増加傾向にあります。
リソースの最適な配分が可能に
MAを活用することにより、売上規模や売上ポテンシャルに応じた顧客のセグメントを作成し、売上を最大化するための優先順位を明確にすることができます。
顧客は商品・サービスの導入前はもちろん、導入後にも競合他社の情報も含めて様々な情報収集を行います。
自社が導入した商品・サービスでどのようなことが可能となるのか、同一のプロダクトラインの商品・サービス、上位プランの機能、競合他社の商品・サービスと比較したときの強みなどの情報を自社サイトで提供することにより、顧客の興味関心を把握することができます。
また、サイトと契約成立後に顧客との重要な接点となるのがメールです。
メール配信にMAツールを利用することにより、顧客がどのようなコンテンツに興味があるのか、どこに不満や問題意識を感じているのかを理解することが期待できます。
顧客のニーズを理解し、営業担当者と情報を共有して連携することにより、適切なサポートや提案を行ったり、解約リスクを軽減するためのアプローチを行うことが可能になります。
例えば大規模で売上ポテンシャルが高い顧客にはカスタマーサクセスの関与度を高くし、専属のカスタマーサクセス担当者がしっかりと対応することが望ましいでしょう。
逆に小規模で売上ポテンシャルが低い顧客にはMAツールを使って効果測定をしながら継続率を伸ばすような施策を行い、限られたリソースの中でもより効率的な施策を打つことができるようになります。
カスタマーサクセスを実現するためのフェーズ
MAを活用して顧客のカスタマーサクセスを実現するにあたっては、3つのフェーズを想定するとよいでしょう。
導入フェーズ
最初は導入フェーズです。
ここでは、商品やサービスを導入して間もない顧客がスムーズに使い始めることができることを目的として、現場の運用担当者のサポートや活用トレーニング、KPIの設定支援などを行います。
この時点でMA活用の前提となる顧客のメールアドレスとクッキー情報との紐づけができていない場合には、メールマガジンの配信などにより早期に紐づけを実現しましょう。
運用フェーズ
顧客が商品・サービスを安定的に活用していけるよう、活用のモニタリングや提案を行います。
運用フェーズが顧客がカスタマーサクセスを実現できるかを左右する重要なフェーズとなりますので、顧客が商品・サービスを十分に活用し、成果を上げることに徹底して注力する必要があります。
同じ商品・サービスを導入した他社の活用事例を豊富に有していると顧客の目的達成を支援できる可能性が高くなります。メールマガジンの開封状況やサイトへのアクセス状況を注視し、顧客のロイヤリティが低下しないように注意を払う必要があります。
契約更新前フェーズ
契約期間の満了が近くなり、顧客が契約更新や上位プランへの変更の可否を検討するフェーズです。
このフェーズでは、契約更新や上位プランへの変更を達成するため、現場の運用担当者や決裁者に対し提案を行う必要があります。
顧客のニーズやロイヤリティに応じて適切な資料を作成して提案を行うことにより、交渉を有利に進めることができます。
カスタマーサクセスを効率化するためにもMAツールを検討してみよう
サブスクリプションサービスの台頭により、長期にわたり顧客との関係性を維持し、向上させることの重要性が増しています。
従来は、商品・サービスを購入してもらえさえすれば、あとは顧客の問い合わせに対応していればいいという「受け」の姿勢で許されていましたが、これからは収益を上げ続けるために「攻め」の姿勢で顧客にアプローチすることが必要となります。
カスタマーサクセスの実現により、顧客生涯価値を高めてサブスクリプションサービスの時代にマッチした顧客との関係構築を目指しましょう。