今日、業界を問わず多くの企業においてデジタルマーケティング手法として広く取り入れられているのが「メールマーケティング」です。
インターネット普及期からメールを活用したマーケティング施策は実践されてきましたが、なかでも「費用対効果が出やすい」、「始めやすい」ことなどが人気を集めている理由として挙げられます。
そこで今回は、2022年最新のメールマーケティングのトピックや、効果分析手法についてMAツールベンダーの視点を交えてご紹介していきたいと思います。
目次
メール配信の効果測定を行う理由
メールマーケティングは、インターネット黎明期から現在まで多くの企業で実践されている歴史のあるマーケティング手法です。
この記事をご覧になられている方の中でも、実際に担当者としてメールマーケティングを運用している方や、ユーザーとしてメルマガを受け取っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で、自社でメールマーケティングを実施した結果、それがどれくらいの費用対効果を生み出しているのかまでは意外と把握しきれていない方が多いのではないかと思います。
企業におけるマーケティング活動では、メール以外にも様々なマーケティング施策を並行して実施しているかと思いますが、施策の効果を向上するうえでは、他の施策と比較して「どの点において、どのような成果が出ているのか」、反対に「どの部分で改善の余地があるのか」などをデータを分析して明らかにしていく必要があります。
長期にわたって施策を続けているほど見直せる部分は多くありますので、「せっかく定型化しているのにもったいない」という気持ちを抑えつつ、効果分析した内容からまずは「小さな改善・変更」から手を付けていただくのがおすすめです。
せっかくメール配信を行なっているのであれば、今よりも効果が出るように配信施策のデータを確認し、効果測定をしっかりとやっていくのがおすすめです。
しかし、メール配信の効果分析を行っていくとしてもただ配信データをみていくだけではなく、その時々で注意すべき点が出てきていますのでトレンドを踏まえた分析をしていく必要があります。
とくに直近2021年~2022年初頭にかけては、「iOS15のメールプライバシー機能による影響」や「cookieデータ取得の注意点」などがありますので次のパートでそれぞれ解説していきたいと思います。
iOS15のメールプライバシー保護への対応策について
まず、最近の話題に挙がっていて押さえておきたいポイントの一つとしては、Apple社が提供しているiOS15よりプライバシー保護強化の一環として「メールプライバシー保護」が新たに搭載されたことです。
iOS15は、日本では2021年9月21日よりリリースされており、今後さらにアップデートを行うユーザーが増えてくることが予想されています。
なぜ、この「メールプライバシー保護」機能に注意が必要かというと、メールプライバシー保護が搭載されたことで、「この機能をONにしている」かつ「iPhoneの純正メールアプリでメールを取得しているユーザー」は、メール開封情報やIPアドレスなどが正確に取得できないようになったためです。
具体的には、iPhone標準のメールアプリを利用している場合、配信されたメールはApple側でキャッシュされ、バックグラウンドで保存されることとなり、開封の有無に関わらず自動的に開封したと見なされてしまう仕様のようです。
この結果として、自動で開封された「みなしの開封数」が増えてしまうことで、従来よりも、メール開封率が高く計測されてしまうというわけです。
なお、これは受信者がいつEメールを開いたかを差出人が知るのを防ぎ、ユーザーのIPアドレスをマスキングすることで、差出人がユーザーのIPアドレスをユーザーのほかのオンライン上の行動につながったり、ユーザーの位置情報を判断するために使用したりできないようにすることが目的とApple社のサイトに掲載されています。
対応策についてはいくつかの方法もありますが、メール開封率以外のデータを利用して効果測定を行うことも方法の1つです。
例えば、メール開封率以外のKPI指標としては以下のデータが利用できます。
クリック率
クリック率(CTR)はメールが開封された後にメール文章内のURLリンクをどの程度のユーザーがクリックしたかの割合です。
多くのメールマーケティングでは、ユーザーへの期待するアクションとしてURLクリックをしてサイトへ流入することを見込んでいるケースが大半ですので、重要な指標と言えるでしょう。
算出方法:クリック率(CTR)= メール経由のサイト流入数/総配信成功数*100
コンバージョン率
コンバージョン率(CVR)は配信したメールからのコンバージョンがどの程度あったかを示す割合です。
主なコンバージョンの種類としては資料請求やお問い合わせ、セミナー申込み、購入などが挙げられます。
算出方法:コンバージョン率(CVR)= コンバージョン達成数/流入数*100
Cookieが使えなくなる影響
上述のメールプライバシー保護と合わせて懸念されていることが「cookie(クッキー)が取得しづらくなる」、「3rd Party Cookie が使えなくなる」点です。
これらの理由としては同じくユーザーのプライバシー保護の観点から、今まで多用されてきたcookieに対する規制が厳しくなり、利用できなくなってしまうということになります。
では、具体的にどのような影響があるのか見ていきましょう。
「cookie」とはユーザーが閲覧したWebサイトのWebサーバーから発行される小さなテキストファイルのことを指します。
そして、ユーザーがWebサイトを来訪した際に発行されたcookieは一時的にパソコンやスマホに蓄積され、ユーザーのWebサイト上の行動データなどを保管することができます。
次に、サイトを訪問した際にスマートフォンやパソコンなどの端末に一時保存されていたテキストファイルをWebサーバーへ送ることで、記憶されていた前回の入力内容などを再び表示することができる仕組みです。
例えば、ECサイトや会員サイトでサイトを一旦離れた後、再来訪した際に買い物カゴに入れた商品が再表示されるのはこのためです。
しかし、2022年4月より日本でも個人情報保護法の改正でcookieなどを含む個人情報関連の規制が強まります。
cookieについてより詳細に見ていくと、cookieには「1st Party Cookie」と「3rd Party Cookie」の2種類があり、このうち3rd Party Cookieと呼ばれるcookieが今回の法改正で大きな影響を受けるので覚えておきましょう。
1st Party Cookie
1st Party Cookie は、ユーザーが訪問しているWebサイトのドメインが発行するCookieを指しており、「訪れているサイト内でしか」機能しません。
MAツールなどのマーケティングツールに行動データを取得するための計測タグをWebサイトへ埋め込み、取得しているcookieは、1st Party Cookieに分類されることがほとんどです。
3rd Party Cookie
3rd Party Cookieはユーザーが訪れているWebサイト以外のドメインが発行するCookieを指しており、訪れているWebサイト以外でも機能するため、この3rd Party Cookieの情報を元にWeb上の広告で活用されてきました。
例えば、化粧品のサイトを訪れた後に別のサイトを見たら、以前に見た化粧品の広告が表示された経験があると思います。
これは、3rd Party Cookieによるユーザーの行動情報から広告の出稿が行なわれていることに起因しています。
しかし、今後は3rd Party Cookie に規制が入ることから、サイト間のユーザー行動や関心を追跡することが難しくなる可能性が高いとみられています。
Cookieが使えなくなる前に行なっておくべきこと
さいごに、Cookie の規制が厳しくなる前に企業が行っておくべき対策についてご紹介いたします。
Cookie の利用が制限される中、自社で顧客の了承を得た状態でのデータは引き続き取得し、活用することができるため、会員登録を増やしていくと同時に既に保有している顧客データは「Cookieシンク」を行っていきましょう。
「Cookieシンク」とは、企業で持っている顧客リストの各ユーザーと、ユーザーが自社のWebサイトへ来訪した際に利用しているWebブラウザに対してサーバーから発行されるCookieの紐づけをすることを指します。
Cookieは、Webサイトの表示コンテンツの最適化やID・パスワードの記録など様々な用途で使用されますが、特にMAツールやCRMツールなどのサービスでは、One to Oneのターゲティングを行う部分で、関わりが深い機能です。
MAツールではCookieシンクの機能によって「企業がハウスリストに持っているユーザー」と「その人のWeb上の行動」を紐づけることができます。
Webサイトのアクセスログを実名化できるため、ツール内での分析や施策配信によるアプローチなどをより詳細に、お客様に寄り添ったかたちで実現できるようになります。
ユーザー情報を紐付けすることでメール配信における効果測定はもちろん、購買やサイト訪問履歴などを元にしたスコアリングも可能となりますので早い時期から着手してみることがおすすめです。
弊社の提供しているMAツールとメール配信を組み合わせることで実施可能になりますので、ご関心お持ちになりましたらお気軽にお問い合わせください。
時代に合った施策効果分析を行いましょう!
長年活用し続けられているメールマーケティングですが、分析指標の基本と思われていた「開封数/率」のデータ取得が変化してきているなど、今回ご紹介したようにメールマーケティングの効果分析も時代に応じて分析方法の見直しが求められるようになっています。
施策が長期化してくるとなかなか手をつけづらい部分もあるかと思いますが、仕様変更やユーザー環境の変化を見逃してしまうと、その後の成果への影響は一段と大きくなってしまうので、まずは小さな積み重ねでも分析・改善を行っていきましょう。